大判例

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京都地方裁判所 平成4年(行ウ)34号 判決

原告

藤田孝夫

右訴訟代理人弁護士

片見冨士夫

被告

(京都市長) 田邉朋之

右訴訟代理人弁護士

田辺照雄

事実及び理由

第三 争点の判断

地方公共団体の執行機関の法律に関する違憲審査権の有無(争点1)について

1  本件のように、助役や市長から専決処理の委任を受けた補助職員が本来市長の権限に属する当該財務会計上の行為を代決ないし専決により違法に処理した場合、市長は、右財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかった場合に限り、自らも財務会計上の違法な行為を行ったものとして、市に対し、右違法行為により市が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最判平三・一二・二〇民集四五巻九号一四五五頁参照)。

したがって、本件において、被告が京都市に対し原告主張の損害賠償責任を負うためには、助役や補助職員が行った本件債務負担行為及び本件公金支出が違法であること、及び右違法な財務会計行為に関して被告に助役や前記補助職員に対する右指揮監督義務の違反があることが必要である。

そして、地方自治法二四二条の二所定の住民訴訟は、普通地方公共団体(以下、自治体という)の執行機関又は職員による財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権限を住民に与えて、地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである(最判五三・三・三〇民集三二巻二号四八五頁)から、右にいう財務会計行為の「違法」とは、財務会計法規違反としての違法に限られるというべきである。

2  ところで、本件は、新たに実施されることになった新生産緑地制度を関係者一般に周知させ、その協力を求めるための、説明会開催及び資料配付のための債務負担行為、及びこれに基づく公金支出が違法であるとして、当該職員たる市長に対し、右支出額相当の損害賠償を代位請求する住民訴訟である。

そして、原告は、右財務会計行為の違法をいうための前提として、改正生産緑地法及び改正地方税法に基づく新生産緑地制度の違憲をいうのであるが、右財務会計行為を代決ないし専決により処理した、助役や前記補助職員はもとより京都市長である被告においても、法律に関する違憲審査権を有するものではない。

即ち、法律は国権の最高機関たる国会が合憲として制定したものであること(憲法四一条)、法律に関する違憲審査権は裁判所が有し(憲法八一条)、内閣その他の国の行政機関ですら法律を合憲として誠実に執行することが義務付けられている(憲法七三条一号参照)ことからすると、一自治体の長等執行機関(その補助職員はもとより)は、法律の内容が憲法に適合しないことを理由にその誠実な執行を拒否することは、最高裁判所の違憲判例がない限り許されないと解すべきである。

そうすると、改正生産緑地法及び改正地方税法について最高裁判所の違憲判例があるとする主張も立証もない本件においては、その誠実な執行のためになされた前記財務会計行為が、その職務上負担する財務会計上の義務に違反する違法なものであるということは到底できない。

第四 結論

以上のとおりであるから、本件債務負担行為及び本件公金支出は、その余につき判断するまでもなく、適法であって、原告の請求は理由がないから、これを棄却する。

(裁判長裁判官 松尾政行 裁判官 中村隆次 遠藤浩太郎)

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